熱中症は短時間で重症化することがあり、死に至ることもある。しかし、高齢者の中には「エアコンは冷えすぎて体に悪い」「電気代が高い」といって、エアコンを使用しない人が多い。さらに、加齢により汗腺の減少により体温調節がしにくく、体内の水分量も減少している。訪問看護師にとって、在宅患者へ熱中症予防の指導を行い、患者の環境を整えることは大切な業務だ。東京都内における高齢者の熱中症による死亡事例の約9割は、室内で発生している。
高齢者の熱中症予防で気をつけるポイントは、エアコンの使用をすすめることだ。室内の温度が28度以上にならないように指導しよう。高齢者は感覚機能が衰えて暑さを感じにくいため、室内温度計を使用して、数値を目で見て判断するよう指導する。さらに、扇風機やサーキュレーターを使用し、風が巡回するようにする。その際、風が直接体にあたらないようにし、薄手のカーディガンや上着で体温調節することを勧める。すだれやカーテンを使用し、直射日光を遮る工夫が必要だろう。これだけでも、室温はかなり変わる。認知機能の低下により患者がエアコンを消してしまう場合、家族や看護師、ヘルパーなどがエアコンを管理する必要がある。
喉が渇いていなくても、こまめに水分補給するよう指導することも大事だ。その際もやはり、数値化することが望ましい。薬を飲むときの水、食事、お茶なども含めて1日の水分量は1200mlを目安にする。500mlのペットボトルを数本用意し順次に飲むか、ポットに入れた水の分量を目安にするなど、飲んだ量が確認できるようにすると良いだろう。